言の葉通信

2021-06-29 16:06:00

ツバキ文具店

 鎌倉で小さな文具店を営むかたわら、手紙の代書を請け負う鳩子。今日も風変わりな依頼が舞い込みます。友人への絶縁状、借金のお断り、天国からの手紙……。身近だからこそ伝えられない依頼者の心に寄り添ううち、仲違いしたまま逝ってしまった祖母への想いに気づいていく。大切な人への想い、「ツバキ文具店」があなたに代わってお届けします。

 

 

 メールやSNSといった電子ツールで気軽に連絡を取ることができる今の時代。便利だけれど何か物足りない。

 「代書屋」に舞い込んださまざまな代筆依頼を請け負う鳩子の仕事の丁寧さには、まさに「和」の心を感じる。その人に適した手紙を仕上げるのに、万年筆で書くのかボールペンで書くのか、その筆の太さ、インクの色、便箋の紙質、封筒の色合い、切手のデザイン、書体… 電子ツールではここまでできない。その手紙がたとえ絶縁状であっても、間違いなく「心」が伝わる。

 

 代書の描写の丁寧さだけでなく、鳩子の暮らしぶりも丁寧で… 鎌倉の雰囲気も心地よい。近所の方々との交流も温かい。人々の心が通った生活。私もこんな丁寧な暮らしがしたいと思った。  

 メールではなくて、大切な人に心を込めて手紙を書きたくなる、そんな作品です。

 

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