言の葉通信

2022-01-30 17:57:00

私が読書を勧める理由(序)

 世の中にはたくさんの情報が溢れかえっている。新しい情報を知りたいなら、当然スマホを操作したほうがいち早く入手できる。娯楽も多種多様にあり、なにも読書を趣味にしなくったって己の好奇心を満たすこともできるだろう。

 けれどやっぱり私は、「本を読んでほしい」と思う。特に、社会に出る前の学生たち…小学生、中学生、高校生、大学生には。

 

 理由を述べる前に、参考として見てもらいたい。

 

 *1月に実施された大学入学共通テストで取り上げられた文章

 ・檜垣立哉「食べることの哲学」(評論文)

 ・藤原辰史「食べるとはどういうことか」(評論文)

 ・黒井千次「庭の男」(小説)

 ・「増鏡」(作者未詳、南北朝時代の歴史物語)

 ・後深草院二条「とはずがたり」(鎌倉時代の日記文学)

  ・阮元「揅経室集」(中国清朝時代の漢詩文)

 

 *2021年度北海道公立高校入試問題で取り上げられた文章

 ・関口雄祐「眠れる美しい生き物」(論説文)

 ・川上健一「雨鱒の川」(小説)

 ・「十訓抄」(編者未詳、鎌倉中期の説話集」

 

 さて、これらの書物を読んだことがある人はどれくらいいるのだろう?

  実際に「入試」で取り上げられる文章の多くは、受験者にとっては初見になる。まちがっても、ライトノベルから出題されることはない。黒井千次氏も川上健一氏も現在も活躍される作家だが、お二人ともかなりのご年配でもあるので、使われる言葉が小難しい。正直、未成年が好んで読むことはほとんどないと思われる。

 

 趣味などではなく、私が「国語」を学習する観点から読書を勧める理由はそこに関係する。試験で目にする文章のほぼすべてが「初見」であるからだ。これらを決められた時間内に読み取るための読書を勧めたい。